しっかりと良い睡眠をとることは美容、健康にとても大事です。これまで何度も聞いたことのある話かもしれませんが、良い睡眠をしっかり取れている人は意外に少ないのではないでしょうか?
今回の記事では、健康維持になぜ良い睡眠が大事なのかをわかりやすく解説し、良い睡眠をとるコツもお伝えさせていただきます。
なぜ睡眠が大事なのか?
睡眠には、身体やこころの疲労を回復する働きがあります。このため睡眠不足や睡眠の質の低下がおきると、心身の健康が損なわれ、様々な形で生活に支障が生じてしまいます。
例えば、睡眠不足や睡眠の質の低下は、太りやすい体質に繋がります。その結果、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクをあげてしまうことがわかってきました。また、不眠症がうつ病発症のリスクになったり、不十分な睡眠による日中の眠気が就労中の思わぬ事故につながったりします。
つまり、良い睡眠をとることは”健康への近道”なんです!身体にいいことを沢山していても、良い睡眠がとれてないと台無しになってしまいます。
睡眠が健康に与える影響を国も重要視しており、2014年に厚生労働省から「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」が発表されています[1]。この指針では、睡眠についての正しい知識を身につけて、良い睡眠習慣を確立することを目指しています。まずは、皆さんが良い睡眠をとれているかをチェックしてみましょう!
健康維持に必要な睡眠とれてますか?
睡眠が大事であることはわかっても、「健康維持に必要な睡眠時間てどのくらいなの?」と疑問に思われる方も多いと思います。意外に知らない”睡眠の常識”を確認していきましょう!
必要な睡眠時間は人それぞれ
日本の成人の睡眠時間について、約3万人を対象にした調査によると、6 時間以上 8 時間未満の範囲に、約 6 割の方が該当します。一方で、6 時間未満の方が男性 12.9%、女性 14.4%、8 時間以上の方が男性 28.1%、女性 23.5%となっており、全体としては 7 時間前後をピークにした広い分布となっていることがわかっています[2]。
皆さんの睡眠時間はどのくらいでしたか?日本人の平均睡眠時間は、実は世界の中でも特に短いことが研究でも明らかにされています。日本人はあまり眠らない国民のようですね。
さらに、個人差はあるものの、睡眠時間は成人以降は年齢を重ねるごとに徐々に減っていくことがわかっています。夜間の平均睡眠時間は 10 歳代前半までは 8 時間以上、25 歳で約 7 時間、45 歳には約 6.5 時間、さらに 20 年経って 65 歳になると約 6 時間というように、約 20 年ごとに 30 分ぐらいの割合で減少していくことが分かっています。昔から、加齢とともに徐々に早寝早起きの傾向が強まることもわかっていますが、この加齢による朝型化は男性でより強いことが分かっています。
また、睡眠時間は、日の長い季節では短く、日の短い季節では長くなるなど、季節による変動もみられます[3]。
日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番
個人差はありますが、必要な睡眠時間は 6 時間以上 8 時間未満のあたりにあると考える
のがよさそうです。必要以上に長く睡眠をとったからといって、健康になるわけではありません。加齢や季節の影響で必要な睡眠時間が変化していくことを意識して、日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番であることを知っておくのがよいでしょう[1]。
自分自身の睡眠の質が十分かチェックしてみよう!
睡眠障害の程度をセルフチェックする方法のひとつに「アテネ不眠尺度」があります。これは2000年に世界保健機関(WHO)が中心になって作成した世界標準の不眠評価法です。
質問は8項目あり、各項目で、「過去1カ月間に少なくとも週3回以上経験したもの」を選びます。最後に各選択肢についている点数を合計します。このスコアが高いほど不眠症の程度が強く、逆にスコアが低いほど不眠症の程度は軽いと判定されます(自動計算してくれるサイトもありますのでご参考にしてください→[4]https://www.kaimin-japan.jp/check/)
合計得点が4点未満の場合、不眠症とまでは言えないレベルです。眠りにくさを自覚している場合は、生活習慣を見直すなど工夫してみましょう。
4点以上の場合には、不眠症が少し疑われますので、生活習慣や睡眠環境の改善を行うことはもちろんですが、心配な方は睡眠障害の専門医に一度相談してみることをお勧めします。6点以上の方はなるべく早く、睡眠障害の専門医の診察を受けることをお勧めします。
問1.床についてから実際に眠るまで、どのくらいの時間がかかりましたか?
いつも寝つきはよい 0
いつもより少し時間がかかった 1
いつもよりかなり時間がかかった 2
いつもより非常に時間がかかった、あるいは全く眠れなかった 3
問2.夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
問題になるほどのことはなかった 0
少し困ることがある 1
かなり困っている 2
深刻な状態、あるいは全く眠れなかった 3
問3.希望する起床時刻より早く目覚めて、それ以降、眠れないことはありましたか?
そのようなことはなかった 0
少し早かった 1
かなり早かった 2
非常に早かった、あるいは全く眠れなかった 3
問4.夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?
十分である 0
少し足りない 1
かなり足りない 2
全く足りない、あるいは全く眠れなかった 3
問5.全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?
満足している 0
少し不満である 1
かなり不満である 2
非常に不満である、あるいは全く眠れなかった 3
問6.日中の気分は、いかがでしたか?
いつもどおり 0
少し滅入った 1
かなり滅入った 2
非常に滅入った 3
問7.日中の身体的および精神的な活動の状態は、いかがでしたか?
いつもどおり 0
少し低下した 1
かなり低下した 2
非常に低下した 3
問8.日中の眠気はありましたか?
全くなかった 0
少しあった 1
かなりあった 2
激しかった 3
良い睡眠をとるためのポイントは?
睡眠の質をよくするためには、ついつい知らずにやってしまっている悪習慣をやめるなどほんの少しの心がけが大切になります。「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」の中から大事なポイントを解説します。
適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを!
良い睡眠のためには定期的な運動を行うことが効果的であることがわかっています。ただし、激しい運動はかえって睡眠を妨げる可能性があり、注意が必要です。日本人の成人を対象にした研究では、睡眠-覚醒リズムが不規則である者は、朝食の欠食頻度が多いことが報告されています。朝食をとることで、こころとからだを目覚めさせ、元気に一日を始め
ることが大切です。
睡眠薬代わりの寝酒は実は睡眠を悪くします!
日本人は寝酒をして寝る人が多いといわれています。寝酒は確かに寝付きはよくなることが多いですが、長期的には飲酒により睡眠が浅く、短くなることがわかっています。眠りにくいからといって安易にお酒に走るのは避けたいものです。
就寝前の喫煙やカフェイン摂取を避けましょう!
たばこに含まれるニコチンには比較的強い覚醒作用がありますので、喫煙によって不眠が引き起こされる可能性があります。喫煙により摂取されたニコチンは、約 1 時間程度作用するので、就床 1 時間前の喫煙は避けた方が良いでしょう。
カフェインも覚醒作用を持っており、コーヒー、緑茶、栄養ドリンク剤などに多く含まれています。夕方から就寝前のカフェインの摂取は、入眠を妨げたり、睡眠時間を短くさせたりする傾向があります。運転シミュレータを用いた実験では、カフェインの覚醒効果は、3 時間程度持続することが確認されています ので、夕食以降にはカフェインの入った飲み物の摂取をなるべく避けるのがよいでしょう。最近若者の間で人気のエナジードリンクもカフェインが多く含まれていますので注意が必要です。
またカフェインは利尿作用もありますので、夜中に尿意で目が覚めることで睡眠が途切れがちになりますのでこの点でも注意が必要です。
良い睡眠のためには、環境づくりも重要です!
スムーズに入眠するためには脳がリラックスした状態になることが大切です。入眠前に明るい光の下で数十分過ごすだけでも、覚醒が促されて入眠が妨げられます。夜は暖色系の暗めの照明でゆっくり過ごすのがよいでしょう。
蓄積された睡眠不足に寝だめは通用しない!
健康な成人を対象にした研究で、約1週間睡眠不足が続くと、その後 3 日間、十分な睡
眠時間をとっても、日中の作業能率は十分に回復しないことが示されています。つまり、週末の「寝だめ」だけでは睡眠不足を取り返すことができません。睡眠不足による疲労の蓄積を防ぐためには、毎日十分な睡眠時間を確保することに努めましょう。
良い睡眠をとって健康なカラダ作りを!
良い睡眠は、心身の健康維持に欠かせません。せっかく運動や食事に気をつけても、睡眠が不十分だとせっかくの努力が台無しになってしまいます。まずは睡眠の妨げになっている生活習慣を改善していくことから始めてみましょう。
参考文献
[2] Kaneita Y, Ohida T, Uchiyama M, Takemura S, Kawahara K, Yokoyama E, Miyake T, Harano S, Suzuki K, Yagi Y, Kaneko A,Tsutsui T, Akashiba T: Excessive daytime sleepiness among Japanese General population. J Epidemiol 2005;15:1-8