心と脳のかかわり
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心と脳のかかわり

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Vol.1 現代の脳科学によって解明可能な「心」

Vol.1 現代の脳科学によって解明可能な「心」

最近の脳科学の発展にともなって、心と脳とかかわりが少しずつ明らかにされてきました。とくに、認知と行動をコントロールする脳のはたらきについては、現在さまざまな方面からの研究が進んでいます。
ここで、認知というのは、目や耳、鼻、舌、皮膚などから入ってくる様々な情報を正確に見きわめ、それらに対しどのような反応や行動をとったらよいかを判断し、実行するためのプランを立てることです。

現代の脳科学の状況

現代の脳科学の状況

残念ながら、今のところ、哲学的あるいは深層心理学的な意味での「心」については、脳との関係はほとんど明らかにされていません。
また、感情や意欲という人間の生活を彩る大切な要素についても、脳とのかかわりはほとんどわかっていません。

すなわち、現代の脳科学は、心のはたらきの中で認知とそれを軸とする行動の基盤となる脳の機能の解明への第一歩を踏み出したというところです。
というと、脳科学って大したことないじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、心のはたらきの一部が脳の機能として理解できることになったのは、実はとても大きな進歩なのです。

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認知のプロセス

認知のプロセス

認知と行動にかかわる脳のはたらきのことを、わかりやすく説明していきましょう。
車を運転して、信号で止まる時のことを考えてみてください。信号が赤に変わりました。その色が、「赤だ」ということは、青でも、黄色でもないということを、識別するということです。すなわち、目に映った色を、脳に記憶として貯蔵されているさまざまな色と照らし合わせて、今、目から入っている情報が「赤である」ということを見極めるプロセスが生じます。この、照らし合わせてしっかりと「赤である」ということを認めるプロセスを、認知と呼びます。

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次に、信号の色が赤であることが認知されれば、それはまた脳の中に蓄えられた知識が動員されて、「ブレーキを踏まなければいけない」という判断が下されます。その判断に基づいて、ブレーキを踏みます。

ブレーキを踏む強さや時間は、周囲の車の流れや信号までの距離を正確に認知することによって決められます。

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信号が青に変わったことを認知すれば、左右を確かめ、周囲の状況を認知し、ブレーキを解除しアクセルを踏むという行動がとられます。

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このように、信号の色を確認し、周囲の状況を見きわめ、的確な行動を組み立てるというのが、認知というプロセスです。 その有り様は、脳波を分析することによって、脳の機能としてとらえることができます。
脳波では、赤信号を見きわめる際に、特徴的なP300という波が現われます。
この波は、認知の能力が優れているほど大きくなります。一方、見極める力が低下すると、小さくなってしまいます。

P300という脳波の発見

認知のプロセス

今までは、赤信号を見たらブレーキを踏むという工程は、反応時間によってのみ、測定されていました。

つまり、赤信号を見たらブレーキを踏むまで、どのくらい時間がかかるかということを測っていたわけです。

それを、コントロールする脳のはたらきについては、ブラックボックスとしてまったく理解されていませんでした。

それが、P300という脳波の発見によって、脳が赤信号を認知する能力というものが測定できるようになったわけです。

この信号の例は、いわば正常な心のはたらきを、脳の機能として理解するものですが、アルツハイマー病をはじめとする認知症やさまざまな心の病の際に生じている認知障害についての研究が、脳波のみならず、最先端の脳科学の方法を利用することによってわかってきました。

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Vol.1 現代の脳科学によって解明可能な「心」

プロフィール

古賀 良彦

古賀 良彦
脳科学は、脳機能の
解明への第一歩を
踏み出したところです。