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No.29 花粉症シーズンもQOLを低下させない

No.29 花粉症シーズンもQOLを低下させない

 東京歯科大学市川総合病院・耳鼻咽喉科部長の中島庸也氏によると、花粉症に関する悩みで意外に多く聞かれるのが、昼間の眠気。海外の報告では、中程度~重症のアレルギー性鼻炎の人は、半数以上が入眠障害、中途覚醒により、翌日に眠気を感じているという。ひどくなると、仕事や家事に支障をきたしかねない眠気にどう対処するかが、QOL(生活の質)を低下させずに、花粉症シーズンを乗り切るポイントらしい。中島氏に、花粉症による眠気を軽減するヒントを聞いた。

鼻づまりと睡眠障害

 花粉症の代表的な症状といえば、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなど。どれも不快な症状であることに変わりはないが、中島氏は「中でも鼻づまりは、睡眠の質の低下を招き、眠気の原因となりやすい。花粉症による眠気を軽減するには、鼻づまりを放置しないことが大切」と指摘する。
 花粉症で鼻がつまると、鼻で息ができなくなるため、口呼吸に陥りやすい。これは睡眠中も同じ。息をするために、口を開けたまま寝ていると、空気の通り道である上気道が狭くなって、いびきがひどくなったり、一時的に呼吸が止まる(無呼吸)などして、熟睡しづらくなるのだ(図1)。
 太りぎみの人は、特に注意が必要。のどの奥や首のまわりについた脂肪が、上気道を圧迫し、もともと睡眠中に呼吸がしづらくなっている可能性があるからだ。ひどい場合は「睡眠時無呼吸症候群」と診断されるが、このような状態の人が、花粉症による鼻づまりを併発し、口呼吸しかできなくなると、無呼吸がさらに出やすくなるといわれている。

睡眠時の鼻呼吸と口呼吸の状態
各種抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率

抗ヒスタミン薬による眠気

 花粉症の薬が原因で、眠くなることもある。花粉症の代表的な薬に、抗ヒスタミン薬があるが、この薬にはアレルギー症状を引き起こすヒスタミンの働きを阻害する一方で、副作用の心配もある。抗ヒスタミン薬の一部が脳内に移行し、ある受容体に結合することで、眠気や集中力の低下など、鎮静作用をもたらしてしまうのだ。
 ただ、同じ抗ヒスタミン薬でも、眠気の出やすいものと、出にくいものがある。図2は東北大学・谷内一彦氏らが、各種抗ヒスタミン薬の鎮静作用(眠気や集中力、判断力、作業能率の低下)を、PET※1で調べたものだが、薬の種類によって、脳内の受容体に結合する割合が異なり、鎮静作用にも差があることが示されている。
 抗ヒスタミン薬は、第1世代と第2世代に大別されるが、第1世代に比べ、第2世代の抗ヒスタミン薬は、副作用が比較的少ない。図2では、d-マレイン酸クロルフェニラミン(商品名:ポララミン)が第1世代、その他は第2世代に分類される。
 現在、医療機関で処方されるのは、主に第2世代の抗ヒスタミン薬。これに対して、市販の花粉症の薬には、第1世代がまだ使われていることが多い。花粉症の薬は、市販薬と処方薬のどちらを選ぶべきだろうか。
 「処方薬は単一の成分でできていて、医師が患者さんに合わせて、複数の薬を組み合わせて出す。これに対して市販の花粉症薬には、一つの薬にさまざまな有効成分が含まれている。それらが総合的に作用するため、『病院の薬より調子がいい』と感じる人も、実際にはいるようだ。眠気の出方も人によって違うので、どちらがいいとは一概に言えない。症状が治まって、特に眠気やだるさも気にならないようなら、市販薬を用いるのも一つの方法。自分に合った薬を見つけて」と中島氏。
 以前に花粉症の薬を飲んだことがある人は、薬の名前やそのときの効き方、眠気がどうだったかなどを、医師や薬剤師に伝えよう。相性のいい薬を見つけやすくなるはずだ。

生活面での配慮も忘れずに

 花粉症対策の基本は、1に防御、2に薬。いくらいい薬があっても、花粉からの防御が十分でなければ、症状はコントロールできない。「花粉が飛びやすい日は、なるべく外出を避ける」「マスクやめがね、帽子などを着用する」「うがいや手洗いをこまめにする」「洗濯物を外に干さない」などの工夫を習慣化したい。花粉から鼻の粘膜を守るジェルタイプの塗り薬や、花粉がつきにくいコートなど、便利な花粉症対策グッズも豊富に出ているので、ライフスタイルに合わせて活用するのも手だ。
 また食事の面では、肉食に偏らないよう、バランスよく食べること。そのうえで青魚やキノコ類、甜茶や赤ジソのエキスなど、アレルギー症状を抑える働きが期待できる、食品やサプリメントを試してみるのもいいだろう。
 薬もそうだが、症状が出る前から摂取しておく方が、効果が出やすい。食品やサプリメントは服用期間を気にする必要もないので、花粉の季節だけでなく、ふだんの生活に取り入れ、年間を通した花粉症対策として役立てたい。

※1 PET(Positron Emission Tomography)
画像診断法の一種で、日本語では「陽電子放射断層撮影法」。放射性物質で印をつけた薬剤をあらかじめ体内に入れ、その薬剤が体の中でどのように分布しているかを、PETカメラで捉えて画像化する。