脳を理解するための基礎知識
HOME > 注目の成分アラキドン酸、サプリについての研究報告 >

No.8 慢性頭痛を放置しない

No.8 慢性頭痛を放置しない

 頭が痛いときに心配なのは、脳腫瘍や脳梗塞などの脳の病気。でも脳の病気がなければ、あとは“ただの頭痛”と放っておいていいのだろうか。
 獨協医科大学病院・神経内科で、頭痛外来を担当する平田幸一氏は、「慢性頭痛はQOL(生活の質)の低下を招き、時として脳梗塞のリスクも高くなるため、専門医の診断と治療が必要。しかしその一方で、市販の鎮痛薬でかえって頭痛を悪化させ、『薬物乱用頭痛』に陥っている人が、社会人を中心に増えている」という。

“ただの頭痛”を我慢しない。“ただの頭痛”と自己診断しない

 国際頭痛学会の分類によると、頭痛には大きく表1のような種類がある。「二次性頭痛」とは、脳腫瘍、脳梗塞など脳に何らかの器質的な異常があり、それが原因で二次的に起こる頭痛で、これに対し「一次性頭痛」は、検査をしても何の異常も見つからない頭痛だ。慢性頭痛、いわゆる“頭痛持ち”の頭痛は、この一次性頭痛のことを指す。
 慢性頭痛の中で最も多いのが「緊張型頭痛」である。頭全体が締めつけられるような痛みを伴う頭痛で、精神的ストレスや、長時間のデスクワークなどによる、首や肩の筋肉の緊張が原因で起こる。

頭痛の分類

 日本人に最も多く、5人に1人がこのタイプの頭痛に悩んでいると言われている。
 「片頭痛」は月に1~2回、多い人で1週間に1~2回の頻度で、頭の片側あるいは両側が、脈を打つようにズキンズキンと痛む、発作性の頭痛である。痛みの程度は緊張型頭痛よりも激しい。ストレスや空腹、不規則な睡眠などで誘発されるが、片頭痛そのものは体質によるところが大きく、有病率は日本人の8%強とされているが、最近の調査では緊張型頭痛とさほど変わらないほど多いとの説もある。このほか同じ片頭痛でも、一定の時期に集中して痛みが起こるタイプの片頭痛もあり、これを片頭痛と区別して「群発頭痛」と呼んでいる。群発頭痛は全人口の0.1%~1.0%に見られる。
 慢性頭痛の中で臨床上、特に問題となるのは、群発頭痛を含めた片頭痛である。片頭痛は痛みが激烈なため、「仕事が手につかない」「起きていられない」など、日常生活上の支障が大きいからだ。また片頭痛のある人は、若年性の脳梗塞のリスクが、少なくとも数倍は高くなるという報告もあり、注意が必要だ。
 平田氏は「慢性頭痛も“病気”だという認識が必要。緊張型頭痛ならあまり心配はないが、片頭痛、群発頭痛でないことを見極めるためにも、頭痛がある人は専門医の診断を受けてほしい」と語る。

社会人で増加。鎮痛薬の過剰服用による「薬物乱用頭痛」

 慢性頭痛の中で治療が難しく、また近年目立って増えているのが、「薬物乱用頭痛」だ。多くはもともと片頭痛を持っていた人が、その痛みを抑えようと市販の鎮痛薬を服用するうち、かえって発作が慢性化してしまったケースである(図1)。
 欧米に比べ、日本では薬物乱用頭痛の発症年齢が若く、就職して2、3年が経過した25歳くらいから増加する。その背景には、きまじめな日本人気質や、効率重視の社会のあり方が影を落としていると平田氏は指摘する。
 「頭が痛いときに無理をしないで休めるなら、薬物依存は起こりにくい。でも多くの日本人には『頭痛ぐらいで仕事は休めない』という意識がある。それで市販の鎮痛薬で痛みを無理に抑えたり、痛みを恐れて早めに鎮痛薬を服用したりするようになる。鎮痛薬は長期に飲みつづけると次第に効き目がなくなって、服用量が増えていくので、薬物乱用頭痛に進展しやすい。自己流で鎮痛薬を使うことの危険性を知ってほしい」。
 目安として、1ヵ月に10回以上鎮痛薬を飲んでいる人、ほとんど毎日激しい頭痛が起こるような人は、薬物乱頭痛が疑われる。

「片頭痛」から「薬物乱用頭痛」へ

特効薬の登場で、片頭痛は治療できる時代に

 薬物乱用頭痛の治療の第一歩は、それまで服用していた鎮痛薬の使用を中止するところから始まる。代わりにカルシウム拮抗薬、抗うつ薬、抗てんかん薬など、頭痛の発作の頻度を減らし、発作時の痛みを軽くする予防薬を用いて、薬物依存から離脱させていく。この方法で、約1ヵ月で7~8割の人が、もとの片頭痛の状態に戻る。
 片頭痛そのものの治療には、鎮痛薬に比べて薬物依存性の少ない「トリプタン」という薬剤がよく用いられる。この薬で片頭痛の痛みを10分の1程度に抑えることができる。片頭痛は体質的なもので根治は難しいが、片頭痛で生活に支障をきたしていた人も、発作時にトリプタンを効果的に服用することで、かなりのQOLを維持していくことが可能だ。
 トリプタンは頭痛治療の切り札的存在。以前は対症療法中心だったが、数年前にトリプタンが登場したことで、慢性頭痛は治療できる時代になった。ただ、頭痛に関して十分な知識を持つ医師はまだ少ない。今後は頭痛に悩む人々に、受診の重要性を啓蒙する一方で、頭痛の専門医を増やしていく必要がある。
 現段階では、頭痛に詳しい医師のいる病院を、選んで受診するのが賢明。日本頭痛学会の「日本頭痛学会専門医一覧」(http://www.jhsnet.org/)のほか、間中信也氏(神奈川県小田原市「間中病院」・院長)が開設する「頭痛大学」の「頭痛の先生」(http://homepage2.nifty.com/uoh/shiryou/ha_dr.htm)などが参考になる。