脳を理解するための基礎知識
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No.4 脳ストレスを味方につける、賢いアタマの使い方

No.4 脳ストレスを味方につける、賢いアタマの使い方

 生きている限り、私たちはストレスから逃れることはできない。ストレスというと悪いイメージが先行するが、上手につきあえば、ストレスは自らを向上させる原動力となり、また脳の健康にも役立つ。
 2005年も残りあとわずか。年末年始にかけ「来年こそ○○しよう」「今年は××を達成するぞ」と、決意を新たにする人も多いことだろう。そこで今号は、当協会理事で作家・医師の米山公啓氏に、脳のストレスをうまく活用した、3日坊主にならない目標設定のコツを聞いた。

デキる人は“脳ストレス”を使っている

 仕事のデキる人は、ストレスとのつきあいがうまい。最近、そう感心させられる話を聞きました。IT企業の社長など、いわゆる若手の“勝ち組”たちが集まって、カート場で忘年会が催されたのですが、彼らの多くは、特にルールがあったわけでもないのに、それぞれ自分の目標タイムを決め、それが達成できると、満足してカートを降りてしまうのだそうです。普通なら「1秒でも速く走ろう」とか、「あいつよりもいいタイムを出すぞ」とムキになったり、あげくにそれが叶わず、悔しい思いをしたりしがちです。でも彼らはそういう乗り方をしません。
 目標に向かって何かをすることは、それが仕事でも遊びでも、脳にとってはストレスです。でも目標の決め方や取り組み方によっては、それが“よいストレス”にもなります。“よいストレス”はやる気を起こさせ、脳を元気にしてくれます。ビジネスの世界で成功を収めている彼らは、経験的にストレスをうまく利用する方法を知っていて、それを遊びにも応用しているのです。

目標を立てるなら、“成功率50%”がベスト

 動物実験で、とても興味深い結果が報告されています。課題が達成できる確率が50%になるまで、その動物の脳内でドーパミンが持続して分泌されたのです。
 ドーパミンとは脳の神経細胞が出す物質で、これが分泌されると「うれしい」、「楽しい」という感情や、やる気がわいてきます。ドーパミンが出続けるということは、目標に向かって、楽しみながら継続して取り組めるということ。またそれによって、脳全体が活性化されるので、結果的により目標に近づくことができます。つまり、成功率50%の目標を課すことが、“よいストレス”となって、最も効率よく自分を成長させてくれるのです。反対に最初から高望みした目標を設定すると、脳はかえってやる気を失います。最終的なゴールは遠くにあるとしても、まずは身近な目標を立てること。ひとつの目標を達成して感じる満足感は、また次の目標に向かう意欲につながっていきます。

ゴールを小刻みに設定する

長すぎるストレスに要注意

 ストレスとうまく付き合うには、ストレスを感じている期間やその時間の長さも考慮する必要があります。長い間、脳が強いストレスにさらされると、脳の細胞、特に記憶に関与する海馬の神経細胞が、破壊されることが知られています。例えば自己中心的で、内にこもるタイプの人は、認知症になりやすいという報告があります。認知症は多数の脳細胞が壊れ、脳が萎縮することで発症します。内向的な人ほど一人で悩みを抱え込み、ストレスを感じている時間が長いために、脳が傷害されやすいのではないかと考えられます。
 長期間ストレス状態に陥らないためには、1日または1週間といったように、日常行動の達成目標、すなわち、ゴールを小刻みに設定することが望まれます。つまり、「来年は営業成績を2倍にしたい」という人は、「今週、新規のお客さんを1人増やす」とブレイクダウンしてはどうでしょう。1週間後にそれが達成できたら、ストレスからいったん離れて満足感を味わい、また翌週から新たな目標に向かうことが出来ます。

あなたはストレスに強い脳? 弱い脳

 脳にも個性があります。ストレスとの関係でいえば、遺伝的にストレスに強い脳の人と、弱い脳の人がいます。これはセロトニンという神経伝達物質と深い関わりがあり、体質的にセロトニンの分泌が多い人は、心が安定しやすく、ストレスに強いタイプということができます。
 もちろんストレスに強い弱いは、脳の優劣とは関係ありません。大切なのはストレスをうまくコントロールして、自分にとっての“よいストレス”にできるかどうかです。そのためには他人に惑わされず、自分なりの目標を立てること。友人が100点を目指しても、自分は60点からでいいのです。急がば回れ。目標設定に関しては、あくまでマイペースを貫くことが、結局は近道になります。

右脳と左脳

反対の脳を使ってリフレッシュすると、アタマはさらによくなる

 脳には右脳と左脳があります。右脳は絵や音楽を鑑賞したり、勘を働かせて全体を大きく捉える仕事をします。一方で左脳は、言葉や数字を記憶したり、論理的に物事を考えるときに働きます。
 芸術家やスポーツ選手など一部の例外をのぞいて、現代のビジネスワークは左脳系の仕事がほとんどです。アインシュタインは、休憩時間に好んでバイオリンを弾いたそうですが、私たちも仕事の合間に積極的に音楽を聴いたり、写真や絵を見たりして、右脳を刺激したいものです。これは単に左脳を休ませるというだけでなく、いったん右脳優位に切り替えることで、もとの仕事に戻ったとき、左脳の機能がアップするからです。ふだん右脳系の仕事に取り組んでいる人なら、ときには左脳系の遊びをやってみるといいでしょう。いつもと全く違う世界でリフレッシュしてこそ、本業でアタマが冴え渡るのです。

 ここまで脳とストレスの関係についてお話してきましたが、冒頭のエピソードで「仕事のデキる人は、ストレスとのつきあいがうまい」と私が感心した理由は、もうおわかりでしょう。ストレスは脳にとってプラスにもなれば、マイナスにもなります。ストレス社会で生きる私たちは、ストレスを前向きに受け止め、生活の中でうまく活用していく知恵を身につけたいものです。